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エピソード

EPISODES

清華苑で働く職員が仕事を通じて体験した心温まるエピソードをご紹介します

EPISODES #1

​名前

名前というのはその人にとってどういった価値観を持つのでしょうか。
ただ単に個人を識別するためなど色々と感じるところはあるかと思います。

介護の仕事をするまで、名前に対して特に考えたことがありませんでした。名前を呼ぶのが当たり前、呼んでもらうのが当たり前、といったことが普通でした。

しかし、ご利用者と日々を過ごしていく内に名前の大切さを考えるようになりました。特養には、100名を超える利用者さんが生活しており、入職した当時は、顔と名前を一致させ、覚えることに四苦八苦していました。

ご利用者と接する時に名前を呼んで接することは相手に対しての敬意を払う事の一つだと思っています。しかし、私自身を振り返ると自分の名前をご利用者に教えることはありませんでした。理由として、自己紹介をする気恥ずかしさと教えても忘れてしまったら、と想像したときの寂しさがあったからです。

ご利用者のA様は言葉がはっきりと話せないのですが、ある時、私に何かと一生懸命伝えようとしていました。耳を近づけると「お名前は?」と言っているように聞こえました。私が聞き返すと、うんうんと頷きます。その瞬間、名前を呼び合うことによって信頼関係が深める事を改めて実感しました。

A様は、今でも、言葉を振り絞り、私の名前を呼んでくれます。
私もA様の名前を呼び、一緒にお話をしています。

特別養護老人ホーム 清華苑
小川俊亮

EPISODES #2

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家族の絆

コロナ禍の今、感染終息が見通せない中、面会が制限される状況が長期化して大切なご家族との時間を過ごすことも困難になっています。中でも、看取り期のご家族にとって次第に老衰していく姿と向き合うことは、やがて別れの時を迎え、少しずつ受け入れるために大切な時間です。

 面会が制限される状況下、看取りをさせて頂いたご利用者のF様にお別れの時が迫ったことを長女様にお伝えするとすぐに来苑され、F様の傍に座ってじっと見つめて数時間を過ごして帰られました。思うように面会できないこの状況で、ご家族は傍に居たい、手を握りたい、声をかけたい、とつらい思いをされていたことがうかがえました。

 私は、長女様がF様に何かしてあげたいと思っておられると感じ、
「職員がお手伝いしますから、お風呂で背中を流して、気持ち良くしてあげませんか」
とお声掛けをしました。すると長女様は、
「是非させて下さい。家にいた頃から背中を流そうかと何度も言ったことがあったけれど、大丈夫と言って一度もさせてくれなかったので、今日初めてできます」
と話されました。

 長女様にとって初めてのお母様の入浴介助をF様が入所された時からの馴染みの介護員や看護師がお手伝いしました。マスク越しの長女様のお顔は終始笑顔で、F様を見つめ、声をかける様子に、お母様に対する強い思いと家族の大切さについて考えさせられました。長女様がシャワーを掛けて声をかけた瞬間には両目をパッチリ開眼され、長女様による初めてのお風呂のお世話は、感動の瞬間となりました。

 F様と長女様の触れ合いの時間が持てたと共に、職員の心も洗われ温まる時間となりました。この機会を与えてくださったF様と長女様に感謝します。

老人保健施設 清華苑養力センター
看護師 富田博子

EPISODES #3

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パパはかっこいい

数年前の出来事ですが、家族で外出中に子供がトイレを我慢できずに車の中でお漏らしをしてしまいました。妻に子供用のパンツを急いで購入してきてもらい、トイレで着替えをしている最中のことでした。

 仕事で更衣介助をおこなっているので何気なく子供の着替えの手伝いをしていると、子供から、
「パパかっこいいね」
と言われました。

 子供からすれば私の仕事がどうとか思わずに、ただ手際の良さを見て、感じたままを言ったのでしょうが、私が今まで介護の仕事を続けてきたからこそ出来たことです。

 このような場面で日頃の仕事を活かせられるとは思わず、ご利用者に感謝されたときと同じ様に子供から言われた言葉に心うたれました。

 介護の仕事を始めて13年目。介護という仕事に更に誇りと自信をもてるようになった1日でした。

通所リハビリテーション 清華苑すいすい
介護員 鎌田紘輔

EPISODES #4

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地域とつながる

3年前、明石南高校で3年生の生徒さん達へ福祉についての授業を担当していました。
 
 最後の授業で、「またどこかで会いましょう」と生徒達に別れを告げました。卒業してから1か月後、明石駅のバスターミナルを歩いていると遠くから「先生!」と呼ばれたので振り返ると授業を受けていた生徒が声をかけてくれました。雰囲気も変わっていたので自分が担当していた生徒とはすぐ気がつきませんでした。
 
 「先生、元気?授業楽しかったで」と、授業が楽しかったことを伝えてくれて嬉しく感じたと同時に、地域の学生に介護の魅力を伝えることで地域とつながっているという事を実感しました。
 
 少子高齢化の時代、少しでも多くの若者に関心を持ってもらいたい。清華苑がつないできたこの思いをこれからもどんどん発信していきたいと思います。

特別養護老人ホーム 清華苑
池内玲夫

EPISODES #5

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最期のことば

93歳のJ様は食事もほとんど摂ることが出来ず、かなり衰弱し1日のほとんどをベッドで過ごされていました。
奥様へもう長くないことを伝え静養室に行くと、その呼吸はこのまま止まってしまうのではないかと思えるほど浅くて弱いものでした。戦争で満州へ出兵され、終戦後も満州に抑留され、とても丈夫だった身体も今ではやせ衰え往年の面影はありません。それから奥様は毎日、お見舞いに来られていました。

 しかし、私の経験上、J様がもうすぐしゃべることができなくなるのは間違いありません。私はJ様に
「優しい奥様ですね。感謝を伝えたほうがいいですよ」
と言うと、J様はニヤッと笑うとプイとあっちを向いて黙ったままいかにも亭主関白らしい素振りでした。奥様は寂しそうにJ様のほうを見ていました。次の日、J様は意識がなくなり、しばらくして息を引き取りました。J様は奥様に「ありがとう」を伝えることなく天国に旅立たれたと思っていました。

 ところが、そうではありませんでした。奥様が退去手続きにご来苑された時に、
「あの日ね、私も『ありがとう』って言ってなかったから、主人に『ありがとう』って伝えたの。そしたらね・・・」
J様は、奥様の帰り際に
「ありがとう……」
と、小さな小さな声で伝えたそうです。奥様は涙で、
「それが、最期の言葉でした。おかげで、主人がこの人でよかったって思って見送ることができました」

 奥様はJ様と結婚して幸せだったそうです。しかし、J様が自分と結婚して本当によかったと思っているのか、長年不安でもありました。
「ねぎらいの言葉も、褒められたこともなかったから」
それが最期に、J様が発した「ありがとう」のひと言で、J様から「いい人生だった、幸せだった」と言われた気がしたそうです。 

特別養護老人ホーム 清華苑
施設長 岩西太一

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